柔らかで綺麗な酸味はグレープフルーツのようで紅茶にも似た風味がありますが、飲み進めると金柑ジャムのような甘味を感じます。稀少品種ローリナは、天然の低カフェインのコーヒー品種で、カフェインが通常のアラビカ種の50%です。先の尖った形が特徴的で、フランス語で尖ったという意味のポワントゥ(pointu)から、品種ブルボンポワントゥ(尖ったブルボン)とも呼ばれていました。
甘味 |
★★★★★★★ |
コク |
★★★★★ |
まろやかさ |
★★★★ |
香り |
★★★★★★★ |
酸味 |
★★★★★ |
苦味 |
★★★ |
★印8段階、オススメ焙煎での評価です。
コーヒー豆 データ
農園名 |
シュマヴァ農園 |
責任者 |
フランシスコ・メナ |
エリア |
ウエストバレー |
品種 |
ローリナ(ブルボンポワントゥ) |
プロセス |
ホワイトハニー |
標高 |
1600~1700m |
オススメ焙煎 |
中煎り |
スペシャルティコーヒー先進国コスタリカ
コスタリカは小さなコーヒー生産国ですが、高品質なコーヒーを生産することで世界的に知られています。1992年からアラビカ種のみの栽培が法律によって定められ、ロブスタ種の栽培が厳格に禁止されています。また、コーヒーの全生産量の約50%がスペシャルティコーヒーだと言われるほどのコーヒー先進国です。シュマヴァ農園は、コスタリカの8つの良質なコーヒー生産エリアの1つ、ウエストバレー地区にあります。ウエストバレーは標高の高い地域で、そのテロワール(育てる環境の土壌・気候・地勢に由来する風味)は美しいアシディティ(酸質)が特徴です。ウエストバレーの中でもシュマヴァ農園のあるロウルデスは標高1,600~1,700mで、昼夜の寒暖さの激しい地域です。激しい寒暖の差は、種子であるコーヒーの豆を守ろうと糖分をたっぷり蓄えたコーヒーの実を育てます。たっぷりと糖分を蓄えたコーヒーの実からたくさん栄養を与えられたコーヒーの豆は、旨みを増すわけです。ウエストバレー地区にはコスタリカを形成したと言われている3つの火山の1つで2,700m越えのポワス火山があるため、火山灰質の肥沃な土壌で、年間降水量も豊富な上、綺麗な水にも恵まれ、良質なコーヒーを栽培するのに非常に適した環境が整っています。シュマヴァ農園のあるロウルデスは、2013年以降、コスタリカのコーヒー・コンテストであるカップ・オブ・エクセレンスで好成績をあげる農園も多く、ウエストバレーでも注目されていいます。
コーヒー史上もっとも重要な島で生まれた幻の稀少品種
アフリカのエチオピアで生まれたコーヒーは、9~10世紀にアラビアで秘薬として飲用されるようになりました。1628年にオランダの商船がアラビア半島のモカ港にたちより、40袋のコーヒー豆を母国に持ち帰ったのが、ヨーロッパ人が始めて買ったコーヒー豆です。その後、イエメン、インドを経て、17世紀末(1696、1699年)にオランダがコーヒーノキをインドネシアのジャワ島に持ち込み、プランテーションによる大規模栽培が成功します。ジャワ島からオランダのアムステルダム植物園に持ち帰られたコーヒーノキ(1753年、この木の子孫の標本はアラビカ種という学名を付けられ、1913年に学名アラビカ種ティピカと変更されます。)の1本が、ブルボン朝フランス国王ルイ14世に贈られました。これを気に入ったルイ14世は、1715年にイエメンでコーヒーノキを手に入れブルボン島(現在のレユニオン島)で栽培させます。ブルボン島は、アフリカ大陸の東400kmのマダガスカル島から更に東800km、インド洋に浮かぶ2500k㎡の小さな島です。たった1本だけ根付いたコーヒーノキから、ブルボン島は一大コーヒー産地となりました。イエメンから持ち込まれたコーヒーはブルボン島で突然変異し、1858年ブラジルに移入されブルボン種と呼ばれるようになります。世界中に広がったブルボン種は、前出のティピカ種とあわせ、現在、二大アラビカ品種と呼ばれています。
1771年、ブルボン島で先の尖った新種のコーヒーノキが発見されます。新種はリロイ種と名付けられますが、通常のブルボン種と区別するため、フランス語で尖ったという意味のポワントゥ(pointu)から、ブルボンポワントゥ(尖ったブルボン)と呼ばれるようになります。ブルボンポワントゥは、素晴らしい香味のコーヒーとして、本国フランスで重宝がられたそうです。しかし、ブルボン朝が滅亡し、島の名がレユニオン島となり、島のコーヒー生産は徐々に衰退していきます。そして、ブルボンポワントゥは、1942年の輸出記録を最後に姿を消しました。しかし、1999年にレユニオン島で再発見された4本のブルボンポワントゥの木を足がかりに、2006年に完全復活させることができました。
一方、ブラジルにブルボン種が移入された時、先の尖った新種のブルボンが混ざっていたようです。その尖った新種のコーヒーノキは、月桂樹に似た葉を持っていたため、月桂樹のフランス語であるローリエ(Laurier)から名前をもらい、ローリナ(Laurina)種と呼ばれるようになりました。ブラジルのカンピナス農業試験所では、1859年に品種としてローリナ種が登録されています。ローリナ種は栽培が難しく、収穫量が他のアラビカ種の30%程度ですが、素晴らしい香味を持つコーヒーとして高く評価されている品種です。ただ、あまりの生産性の低さから、ほとんど栽培している農園がないのが現状です。レユニオン島で再発見により再び注目されることとなったブルボンポワントゥですが、各国のコーヒーの研究機関によりブラジルのローリナ種と同一のものだということが明らかになっています。時代は遡りますが、1880年、先の尖ったリロイ種はニューカレドニアにも移入され、現在も細々と生産されています。
姿を消したと思われていた幻のコーヒーは、近年の再発見で素晴らしい香味が再び注目されるようになりました。シュマヴァ農園でも新たな挑戦として、このローリナ種を入手し、ホワイト・ハニー・プロセスで精製しています。しかも、コスタリカのみならず、他国でも多くのカップ・オブ・エクセレンスの優勝や入賞をはたす農園をプロデュースしてきたトップ・オブ・トップの技術を持ったフランシスコ・メナ氏のホワイト・ハニー・プロセスです。
ホワイト・ハニー・プロセス
ホワイト・ハニープロセスとは、ウォッシュド・プロセスとハニー・プロセスの中間のような精製方法です。ウォッシュド・プロセスとは、コーヒーの果実からコーヒー豆を取り出し乾燥させる方法の1つで、収穫したコーヒーの果実から外果皮や果肉を除去し、綺麗に水で洗った後、天日乾燥をする精製方法です。ウォッシュド・プロセスは、コーヒー豆が持つ本来の風味を味わえる精製方法だと言えます。一方、ハニー・プロセスでは、外果皮と果肉を除去する時に、コーヒー豆の周りに付いた甘味のあるミューシレージと呼ばれる粘液質を残した状態で、ゆっくりと天日乾燥させる精製方法です。ハニー・プロセスでは、完熟果肉の甘味が豆に移り、ウォッシュド・プロセスでは得られにくいハチミツを思わせる独特の香りやボディをもったコーヒー豆に仕上がります。ホワイト・ハニープロセスとは、ウォッシュド・プロセスとハニー・プロセスの中間のような精製方法で、ウォッシュド・プロセスでこそ味わえるコーヒー豆が持つ本来の風味と、ハニー・プロセスでこそ味わえるコーヒー果肉の甘味が、程よくミックスされ絶妙なバランスで味わうことのできる精製方法です。